名作童話劇場 2




(お、八戒と悟浄は出掛けたのか。毎晩お盛んなこった。…ま、こっちも楽しませてもらってるから文句言う筋合いでもないがな。…さて…)

「ご馳走様〜…。」

「待てよ、悟空。暇なんだろ。遊んでやるよ。…何ビクビクしてんだよ。」

「やだよ、どうせ狸さんごっこだろ!」

「…あん?」

「夕べだって、抱っこしておんぶしてって一晩中…。俺、朝、たいへんだったんだからなっ!」

「…楽しかったろ?」

「楽しくないよっ! 俺一人ヒイヒイ言わされて、バカみたいじゃんかっ!」

「そうか?俺はまた、おまえも楽しかったのかと思ったぞ。俺の首根っこにしがみついて、もっともっとってずいぶん腰を振ってたじゃないか。」

「そ、それは…、だって…。」

「ま、いい。狸さんごっこが嫌なら、今日は別の遊びにしよう。」

「別のって…、何の…?」

「そうだな。大きな蕪ごっこってのはどうだ。」

「…大きな蕪? 大きくてうまそうな蕪だから、食っちゃおうとかってんじゃないだろな。」

(ちっ、サル頭の癖に学習しやがったな)「そんなんじゃない。第一まだ土の中に埋まってる蕪だ。」

「…そんなら…、いいけど…。」

「よし、それじゃここに来い。ここだ、この椅子の前に立て。」

「えー、なんでわざわざその椅子〜?」

「これはな、この部屋で唯一、肘掛のついた椅子なんだ。これならな…。」

「ちょっ…。うわっ、いきなりパンツ下ろすなっ! 痛えっ、足払いするなんて卑怯…! わーっっ! だからどっから出したんだってばその紐っ! ヤダヤダヤダッ こんなカッコやだーっっ!!」

「ふふん、なかなかいい眺めだぞ、悟空。」

「三蔵ーっ!こんなのやだーっ! せ、せめて膝だけでも下ろしてよーっ!」

「ばーか、それじゃわざわざこの椅子に座らせた意味がないだろ。さて、大きな蕪ごっこ始めような。昔、あるところに、じーさんとばーさんがいました。」

「またじーさんばーさんかよー。もう絶対ばーさん汁なんか飲まないからなっ!」

「安心しろ。これは露西亜の話だ。狸さんは出てこないよ。」

「ほんとー…(疑り)?」

「本当だ。ある日、じーさんは畑で一抱えもあるような蕪を見つけました。…。」

「…何じろじろ見てんだよっ!」

「…おまえの蕪は、お世辞にも大きな蕪とはいえんな。」

「!! う、うるせー!! こ、これから大きくなるんだいっ!」

「…これが邪魔なんだ。この、中途半端に生えてる雑草が。」

「いたいたいた! 引っ張るなっ やっと生えてきたんだからっ!」

「この雑草が養分吸い取ってるんじゃないのか? …ようし、畑仕事ついでに草刈もしてやろうな。」

「やだーっ、何鋏なんか出してんだようっ、あ…あ…あ…。」

「ほーら、きれーになった。」

「何すんだようっ! せっかく生えたのに!! 悟浄にまた笑われるじゃんかっ!」

「…なんでそこで悟浄が出てくる?」

「悟浄といっしょにフロ入ると、かわいーかわいーってわらわれるんだよっ! せっかく最近やっと笑われないようになったのに…。 いてっ、なんで殴るんだよう!」

「悟浄なんかとフロ入らなくていいっ! これからは俺が隅々まで洗ってやるからっ!」

「…わかったから、そんなおっかない顔すんなよ…。」

「…まあいい。さて、蕪だな。これじゃあんまりひんそーだから、じーさんばーさんが少し大きくしてやろうな。こっちの手がじーさん、こっちがばーさんだ。」

「そんなこと言って…、結局触るんじゃんかっ やっ、あっ。」

「ほれ、たちまち大きくなりました。…大きくなったら収穫しないとな。」

「痛い痛い痛い! 引っ張ったって抜けないよっ!」

「おまえもそう思うだろ。蕪ってのはさ、こういう形をしてんだよな。」

「ヒィッ! ケツ撫でくりまわすなよっ!」

「だからさ、ただ引っ張ってもヌけないよな。こーゆーのはじっくり掘ってかないと。」

「やあっ! 指っ、指がっ…!」

「じーさんが掘ってみました。でもヌけません。ばーさんも掘ってみました。でもやっぱりヌけません。」

「ヌけませんって…、押さえちゃってるんじゃないかあっ!」

「そこに鼠さんが通りかかりました。…うーん、鼠さんじゃこんなもんかな?」

「何ごそごそ探してんだよっ! ? え、何? その箸、何するの?」

「ビクビクすんなよ。鼠さんじゃこんなもんだろ。塗りの箸だから、怪我なんかしねーよ。さあ、鼠さんにも掘ってもらおうか。」

「や、やだやだっ! 箸なんか突っ込むなっ!」

「猫さんも通りかかりました。猫は…これかな。」

「レ、レンゲ…! いきなりそんなの入んないようっ!」

「大丈夫。柄の方を使うから。」

「は、箸っ、箸抜いてようっ。」

「協力してやんなきゃヌけないだろ? さて、犬さんも通りかかりました。犬は…これじゃセントバーナードかな。」

「と、徳利…、ばかあっ、そんなの、入る訳ないだろっ!」

「俺のが入るんだ。入らないことないさ。ゆーっくり掘ってもらおうな。」

「あっ、やっ、そんなの無理…、あっ…、あっ…。」

「犬さんも…じーさんとばーさんと、鼠さんと猫さんと協力して掘ってくれたけど…、それでもやっぱりヌけません。」

「く…苦しいよう、三蔵…、早く…、なんとかしてよう…。」

「あんまり喋んないほうがいいぞ、悟空。レンゲと徳利がおまえが身動きするたんびに触れ合ってカチカチいってる。…可愛くて、もっとむちゃくちゃいろんな物を突っ込みたくなる。」

「ひ、酷いよ、さんぞー…。」

「…あーあ、また泣かせちゃったか。だけどなあ、悟空、まだこの後、馬さんが来るんだぞ。」

「え! 馬…。」

「馬さんは、何がいいかなあ。馬並ってくらいだからなあ。…こんなのどうだ?」

「こんなのって…、そ、それっ、経文じゃないかっ。」

「大丈夫、ちゃんとラップで包んだから、汚れない。…さすがにこれは協力してって言うのは無理か。」

「そ、そーゆー問題じゃなーい!! あっ、ひっ!」

「ご希望どおり箸もレンゲも徳利も取ってやったぞ。文句ないだろ。さて…。」

「やっ、だめっ、そんなの入れちゃ…、あーっ、あっ…。」

「馬さんも一生懸命掘りました。でもやっぱりヌけません。…どうだ、ありがたーいお経で犯されてる気分は…。」

「やあっ、も、手ェ放して、イかせてっ、おかしくなっちゃいそうだよう…。」

「ふ、いっちょ前に脈打ってやがる。ありがたいお経だけあって、隅々まで行き届くだろ。」

「そ、そんなもん使って…、罰当たり坊主〜。」

「ばかだな。営みあっての人間だ。その人間の最低限の欲望にも対応できないような経文なら、ないほうがましだ。」

「そ、そんな屁理屈…、あうっ、あーっ…。」

(クスクス)「そろそろ許してやるか。…ところでな、悟空。じーさんとばーさんには、働き者の息子がいたんだ。」

「え…、息子って…、まさか…。」

「この息子は本当は鼠さんより前に来てじーさんとばーさんの手伝いをするんだが、俺のムスコは、馬さんの倍は働くからな、トリまで控えてたんだ。ほーら、よく日に焼けた、逞しいムスコだろ。」

「だから…、それ出すなってば〜(泣)」

「何言ってる。おまえだってこのまま放置されたら困るだろ。それにおまえのこの蕪は、俺のムスコにしかヌけないことになってるんだ。それっ!!」

「あっあっあっ、あーっ!!」

「……。」

「嫌っ、そんなに掻き回しちゃ…、あーっ、いやあーっ!」

「……。ふう、やっとこさヌけましたとさ。」

「もう、…もう終わりでしょ、大きな蕪ごっこ。…早くはなしてようっ!」

「うーん、だけど、収穫した蕪はまずフロでよーく洗って、次にはベッドで調理しないとな。…今晩は忙しくて眠れないかもしれないな。」



戻る