淋しい夜には「本当に大丈夫ですかねえ。」 八戒は訝しそうに眉をひそめた。足を止める予定のなかった村の、小さな宿屋でのことだ。 八戒の目の前には仏頂面の三蔵とベッドから目だけ出している悟空。悟空の足には大きなギプスが巻かれている。 「ほんっとーに、おとなしくさせていられますか?」 「うるさい。何度言えば気が済む。」 三蔵は更に不機嫌な顔で答えた。 敵に襲撃され、足を折った悟空は、それでも元気そうに見えた。一晩を一人きりで過ごしたのがよほど心細かったのか、いつもよりもいっそう明るく、4人で過ごせることが嬉しくて仕方がないようにはしゃぎまわっていたのだ。 だが、折れた足で崖を攀じ登ったり、その後いきなり戦闘に参加したりして、やはり体には大きなダメージを負っていたらしい。出発すると間もなく体の不調を訴えだし、発熱まで始まった様子に、自称保父の八戒が有無を言わせずにこの村に停止したのだ。 だが、予定外に立ち寄ったこの村には、大きな宿はなく、やっと泊まれたこの部屋も、2人泊まるのがせいぜいといった広さだった。もちろん体調の悪い悟空がベッドを使うとして、当然のように居残る事を主張している三蔵に、今八戒は難色を示していたところである。 悟空の不調は、ゆっくり休めば治る程度の事だろう。だが、そのゆっくり休むのに、相手が三蔵ではいかにも不安だというのだ。 「…いいですか、悟空、おとなしくしてないと、明日また痛い目を見ますよ。 今痛くないのは、薬のお陰なんですからね。悟空、聞いてます?」 「うー…。」 矛先を変えて悟空に言い聞かせてみても、なんとも心もとない返事しか返ってこない。八戒は肩を落としてため息をついた。 部屋の戸口には、宿の親父が嫌そうな顔を隠そうともしないで突っ立っている。もともと一人しか泊まれない部屋を頼み込んで二人に提供してもらっている。余分な二人には一刻も早く出て行ってもらいたいのが親父の本音だろう。 「………やっぱり僕が…。」 「無理無理。今の三蔵様になに言ったって聞く耳持ちゃしないって。」 諦めきれずに言い募る八戒に、悟浄が軽く首を振る。 「何しろ大事な大事な悟空ちゃんがぶっ壊れちゃって、潤んだ瞳で見つめちゃってるんだから。」 「…だから心配なんじゃありませんか。」 チキ、と三蔵の懐から音がする。揶揄たっぷりの悟浄に、三蔵が愛用の銃を向けた音だ。 「おお、おっかね。さあ、邪魔者は退散退散。」 悟浄は八戒の襟足を掴むと無理矢理引っ張った。八戒は服の襟に首をしめられてぐえ、と無様な声を漏らし、それでも必死に三蔵に食い下がった。 「三蔵、くれぐれも無理はさせないで下さいよ。何よりも悟空の足に響くんですからね。」 具体的に何をと言わないのが、八戒のせめてもの思いやりだろう。三蔵は面倒くさそうに片手を振った。最後の力で戸口に縋って、八戒は更に言う。 「僕はっ、あなたの人間性をっ、信じていますからねっ…!」 がりっと音を立てて、八戒の爪が戸口から離れた。もつれる足音が遠ざかっていく。ようやく悟浄と八戒が去ったのを見て、宿の親父も重い腰を上げた。 「……何が人間性だ。妖怪のくせに。」 三蔵は渋い顔で呟いた。忌々しそうに八戒の去った後を目で追っているのを見ると、やはり彼の心配どおり下心満々だったらしい。 「…なあ、さんぞ…。」 悟空が被っていた布団から顔を出した。言葉尻が甘くなるのは、悟空が三蔵と二人きりの時の癖だ。 「俺さ、頑張ったんだよ。足折れてすっげー痛かったけど、三蔵のとこに帰らなきゃって思ったし、だから淋しいのも我慢したんだ。」 「お前が俺のところに帰ってくるのは当たり前だろうが。」 三蔵はえらそうに腕を組んで、悟空を見下ろした。 床の上に直にマットを置いたかと思えるような簡素なベッドは、三蔵が腰掛けている椅子よりだいぶ低い。組んだ足をぶらぶらさせる三蔵と少しでも目の高さがあうように、悟空はよいしょと体を起こした。 ギプスで固定された足に重心を狂わされるのか、かすかに体を揺らめかせて悟空は三蔵を見つめる。 「一人で野宿すんの…、すっげー淋しかったよ。」 普段いかつい防具の下に隠されている肢体は、普段着になるとびっくりするほど華奢だ。悟空はその細い腕を伸ばして、三蔵の膝に触れた。 「頑張ったから…ご褒美くれないの?」 「…何が欲しいんだ。」 一人寝が、悟空の言葉どおりよっぽど淋しかったようだ。三蔵はわざと聞いてみる。悟空がこんな表情をするのは珍しい。頬を赤く染めて、瞳も唇も潤ませている。抱きしめれば、すぐにでも可愛い声を上げるだろう。 だが、三蔵にも意地があった。八戒に人間性云々まで言われて、それでも悟空の色香にすぐに音を揚げるのはどうにも業腹だ。 「三蔵の…いじわる…。」 悟空は困ったように睫を伏せた。手がもじもじと膝の上で動く。三蔵の法衣の裾を割ろうかどうしようか迷っているようだ。 「八戒にしつこく言われたからな。俺はなんにもしねえよ。」 三蔵は内心ワクワクしながら答えた。悟空が困っている顔を見るのは、殊のほか楽しい。 「だけどお前が勝手になんかするのは…俺の知ったこっちゃねえな。」 「ん…、ふっ、ふあ…っ。」 蕩けそうな顔をして、悟空が鳴いた。 薄い布団はとっくに蹴り飛ばされて、ベッドの下で丸まっている。悟空の両手はパジャマ代わりの薄地のズボンの中に潜り込んで、さっきから小さな山を築いている。それがしきりにもぞもぞ蠢いては、悟空に声を上げさせるのだ。 三蔵はその悟空の様子を凝視していた。冷静な顔を装ってはいるが、さっきからぶらぶらしていた足がピクリとも動かなくなっているのは、かなり目の前の悟空に集中しているからに違いない。ついにたまりかねたように、三蔵は低い声を漏らした。 「おい…。俺に見てほしいんなら、直に見せろ。」 「だって、…足が邪魔で、全部脱げないんだも…。」 「必要なとこさえ出しゃいいんだよ。」 八戒が設えたギプスにはこんな意味もあったらしい。確かにズボンの裾よりは、ギプスの方がだいぶ太い。 悟空は三蔵の苛立った声にぞくぞくと身を震わすと、ぎこちない動きでズボンをずり下げ始めた。片足を動かせないだけで、悟空の動きはじれったいほどにのろい。 真っ白い尻が半分出たところで、何かに引っかかったようにズボンも悟空の動きも止まってしまう。三蔵は思わず舌打ちをし、手を伸ばした。乱暴にゴムのあたりを掴むと、ぐっと力を込めて引っ張る。 「あ…っん。」 悟空がかすかにうめく。頭をもたげて早くも蜜をこぼし始めていた悟空自身にズボンのゴムが引っかかっていたのだ。 力任せに引っ張られたゴムは、悟空自身をビクンと震わせた。反動で戻ってきたそれが、腹を打ちそうに跳ね返る。 「もっと大きく足を開け。よく見えねえじゃねえか。」 三蔵はごくりと生唾を飲み下すと、鷹揚に悟空に命じた。 悟空はもじもじと足を開く。自由な片膝だけを折ってベッドの上に座っている悟空は、ベッドヘッドに寄りかかっているとはいえ、安定を欠くのかどうしても背中が丸まる。 そうして悟空が俯いてしまうと、刻々と姿を変えていく悟空自身が思うように見えなくて、三蔵は少し苛立っていた。 「早く、…続きをやれよ。」 「だって…、恥ずかしい…。」 呟く悟空は、それでも両手を股間に向ける。自分自身を握りこむと、ぶるっと胴震いをした。 「もっとこっち向け。…オラ、どうしたよ。」 じれったい。三蔵は目の前に伸びてきた悟空の素足を掴んだ。親指と人差し指の間に指が潜り込むと、悟空がびくびくと体を震わす。こんな些細な刺激で感じているらしい。三蔵はぐりぐりと指の間を擦ってやる。 「あ…っ、んっ、んっ…。」 「手ぇ、休めるんじゃねえよ。」 「ふあ、だって…っ。」 黄金の瞳に、溢れそうに涙が盛り上がってくる。いつもより火の着くのが早い。 「こんなとこで感じるのかよ。…インランな奴。」 「あ…っ、や…だぁ…。」 持ち上げた足の裏をべろりと嘗めると、悟空の背中が反った。そのまま足の指を1本ずつ丁寧に嘗めてやる。 足を上げさせると、悟空の奥深くまでよく見える。三蔵の舌が動くたびに震える体を持て余すように、ゆっくりと手が動き出した。 先端から溢れる蜜にぬめる片手が、もっと奥まで滑り降りて行く。三蔵は悟空の膝をもっと深く立てさせた。今は硬く閉ざされた悟空の入り口に、細い指が潜り込んで行くのがはっきり見える。 「んっ、…んふう…っ。」 躊躇うような指先が、次第に狭いそこを寛げていく。のろのろとした出し入れの度に、もう一方の手が握り締めている悟空の先端からはたらたらと蜜が零れた。入り口の辺りは充血して、もどかしそうにひくひく蠢いている。自らを犯す指はいつのまにか2本。 三蔵は悟空の指を噛んだ。さして力を入れたわけでもないのに、悟空は敏感に震える。 「しっかりくわえ込んでるじゃねえか。…いやらしい奴だな。」 「しようが…ないじゃん。さんぞ、が、…こんな風に、したくせに…っ。」 唇を震わせて、悟空が抗議する。三蔵は一瞬呆気に取られ、それからほくそえんだ。 「安心しろよ。責任は取ってやる。…きっちりと、な。」 悟空の膝に顔を近付け、ぴくぴくしている物にふうっと息を吹きかけてやる。内股を、下から上までじっくり嘗めてやろうかと思ったが、それは止めにする。今日は悟空にすべてやらせるのだ。 それにしても、そろそろ見ているだけでは物足りなくなってきた。 「んあ…っ、もう…っ。」 すすり泣いた悟空が身を捩り、体を折った。視界を塞ぐ悟空の額を、三蔵は片手で押しやった。 「見えねえじゃねえか。しゃんとしてろよ。」 「だって…っ、こんなんじゃ、全然足りない…っ。」 入り口辺りを浅くつつきまわすだけの指が、切なくなったらしい。悟空は、縋るように三蔵を見上げる。さっきから潤んでいた大きな瞳から、ついに涙が一筋零れ落ちる。 「責任…とってよぅ…。」 三蔵はごくりと生唾を飲み下した。それでも焦りが顔に出ないように静かに背を伸ばす。硬く組んでいた足をゆっくり解いた。 「今日は俺は何にもしないって言っただろ。」 悟空の顔につき付けるように、膝を大きく開いて腰を前にずらす。着物の前が割れて、悟空の目には、さっきから張り詰めているものまで見通せるはずだ。 「…準備もてめえでしろよ、な。」 悟空は三蔵の両の膝に手を置いた。少しためらって、それからゆっくりと三蔵の着物の端を咥える。 「…そうだ。歯ぁ立てんなよ。…うまくなったじゃねえか。」 三蔵は、悟空の髪に指を埋めた。母親の乳房に吸い付く赤ん坊みたいな声を上げて、悟空が三蔵の下半身を咥えこんでいる。 悟空の口には三蔵の物は納まりきれなくて、余った部分に手も添えられている。その手が時折袋の方もぎゅっと捏ね上げて、三蔵の足をみっともないくらいひくつかせるのだった。 三蔵は、ベッドの上の悟空を見た。 ギプスの足は流石に動かしづらいようで、悟空はその足を軸に、三蔵の方に体を捻じ曲げている。思うところまで体が届かないのか、足を限界まで開いているので、形のいい尻の間からほんの少し陰りが見える。無理に捻った背中は、大きめなシャツの上からも、悟空の贅肉の少ない引き締まった体のラインを引き立てている。ギプスが邪魔で脱げなかったズボンが足に絡まっているのも、なんだかとても卑猥な感じだ。 三蔵は手を伸ばした。悟空のシャツの裾を捲り上げる。背骨に沿ったくぼみが今日は少し湾曲していて、肩甲骨の三角を際立たせている。 その辺りを指でたどると、悟空はぞくりと震えた。 「んん…っ、んっ。」 「休むなよ。責任とって欲しいんだろ。」 ほっぺたをピタピタ叩く。ずっと伏せられていた悟空の睫が上がった。 「もっと…触って。」 赤く染まった唇と三蔵の先端とが、粘る糸で結ばれている。 「触ってるじゃねえか。」 体をかがめて、悟空の頭を抱え込むように伏せ、シャツの内側に掌を這わせる。じっとり濡れているのは、三蔵の掌か、悟空の背中か。 「そこじゃなくて…、もっと…。」 三蔵の掌の位置が変わるたびに、面白いように悟空の背中が震える。そのまま手を滑らせて、三蔵は悟空の胸へと手を這わせた。 長い指が、すぐに尖った突起を探り当てる。きゅっと指先でつまむと、簡単に可愛い声があがる。 「あん…っ、もっと、下…だってば…っ。」 「…悦んでんじゃねえか。」 からかうように言うと抗議の印なのか、悟空は舌を尖らせて、三蔵自身をぺろりと舐め上げる。先っぽの張り出した部分に舌先が引っかかって、一瞬三蔵を胴震いさせた。 「く…っ、もういい…。」 三蔵は慌てて悟空の頭を引き剥がした。このままでは悟空の顔にぶちまけてしまいそうだ。 悟空が半身を起こした。肩が緩く上下している。頬を真っ赤に上気させて、悟空は潤んだ瞳を向けた。 「さんぞ…、こっち来て…。ここに…、早く…。」 思い切ったように息を吐き、悟空はおずおずと手を這わせた。自由な方の膝を胸にひきつけ、背中から回した指は双丘を開いてみせる。たっぷり潤って緩んだそこが、三蔵を待ちかねたようにひくひくと収縮を繰り返している。 「ここに…三蔵のおっきいの、…ちょうだい。」 掠れた声が、三蔵を誘う。思わずぐらりと目が回った。今すぐにでもむしゃぶりついて悟空に悲鳴を上げさせたい。だが、やっとの事で三蔵は踏みとどまった。 「今日は俺はなんにもしないって言っただろ…。」 無理矢理ひねり出した声は、悟空以上に掠れている。 「そっちに行くくらいはしてやる。その後は…お前が勝手にしろよ。」 三蔵は手を伸ばして、背後から悟空のシャツの内側に手を忍ばせた。わき腹を擦ると両方の親指に尖った乳首が当たる。爪がその硬い粒を弾くたび、悟空の背中が跳ねた。 緩く組んだ胡座の上に、悟空が背中を摺り寄せてくる。抱き上げてやれば簡単に貫けるのだろうが、それでは悟空にさせることにはならなくなってしまう。 三蔵は奥歯を噛み締めて堪えていた。伸びやかな背中と柔らかい布地のシャツとが、さっきから三蔵を刺激しつづけている。 辛い状態を堪えているのは悟空も同じで、彼はさっきからすすり泣きを漏らしている。もう体の準備は十分にできたのに望むものになかなかありつけなくて、高まる欲望ばかりが悟空の理性を吹き飛ばしているのだ。 「う…ん、さんぞ、早く…ぅ。」 両手を下に着き自由な片膝を曲げて、屹立した三蔵に届こうとするのだが、ここでもやはりギプスは邪魔なのだった。 そうして何度もつるつるの尻だけが三蔵の天辺を擦っている。疲れてきたのか、両手が少しずつ震えている。体重を支えられなくなるのも時間の問題だろう。三蔵は我慢しきれなくなった。 珍しく悟空に恥ずかしい誘いの言葉を吐かさせたのだ。少しぐらい手伝ってやってもいいだろう。 両手を伸ばす。悟空の膝を掴もうと背中を丸めると、腹と背中とが密着し、悟空の肩に顎が乗った。 はっと悟空が体を強張らせる。構わずに両膝を捕まえる。子供に小用をたさせるような姿勢に悟空を持ち上げる。だが、ギプスが意外なほどに重い。 ほんの少しだけ手助けしてやるつもりだったのに、そっと下ろしてやれるような重量ではない。三蔵は少し躊躇して腹を決めた。 抱き上げた悟空を抱え込む。屹立した己の真上だ。悟空が喉をそらせて喘いだ。慌てて手が下半身を探る。しっかりと三蔵を固定して、自分の入り口もくつろげている。 三蔵は薄く笑った。悟空も待ち焦がれている。少しくらい乱暴になったって…いいじゃないか。 「きゃう…っ!」 悟空が聞いたこともないような甲高い悲鳴を上げた。三蔵がいきなり手を放したからだ。 待ち構えていた三蔵自身は一直線に悟空の奥まで貫いて、彼を痙攣させた。暖かい肉がぎゅうっと三蔵を締め上げる。白いシーツに悟空の白い粘液が迸った。 「う…っ、このバカ…っ。一人でイくんじゃねえよ…っ。」 「はぁ…、さんぞ、すっごい…。」 聞いているのかいないのか、悟空は夢見ごこちの表情で答える。三蔵は急に凶暴な気分になった。手を伸ばして悟空の前をぎゅっと握る。貫かれたままの悟空がびくっと跳ね上がった。 「痛…っ、三蔵っ、やだ…っ!」 「勝手にイった罰だ。」 そう言いながら、三蔵は少し呆れている。暴力を加えられた悟空自身が、勢いを盛り返しているのだ。 親指で天辺を捏ねてやると、それは明らかに力を取り戻した。見る間に育っていくその天辺に、今度は爪を立ててやる。悟空はひっと悲鳴を上げたが、逃げ出そうとはしない。このサルを本当に自分がこんな風に教え込んだのだろうか。本当に淫乱で…自分にぴったりじゃないか。三蔵は舌なめずりをした。 温かい悟空の内側は、何をしてやらなくても蠕動を繰り返し、三蔵の息を荒げる。握り締めた手を軽く上下させると、締め付けは一層きつくなった。 「あ…、くぅ…ん…。」 悟空が喉を鳴らす。腰が自動的に蠢きだす。たった今果てたばかりだというのに、更なる快楽を求めて、悟空は自分の一番いいところを探しているようだった。 だが、そのゆったりした動きは三蔵にはもどかしすぎるものだった。三蔵は手を離した。白く汚れた手が離れていくと、悟空は咎めるような声を上げた。 「やっ、止めないで…っ。」 「自分でしろって言ってるだろうが。」 三蔵は悟空の肩に顎を食い込ませた。膝を取り、両足をできうる限り開かせる。はちきれんばかりの欲望に、悟空自身が蜜を滴らせながらぴくぴく震えているのが分かる。 「…昨夜は一人でやったんだろ。」 息と一緒に、悟空の耳の中に言葉を吹き込む。ついでにピンク色に染まった耳たぶを軽く噛んでやると、悟空の中がぎゅっと縮んだ。 「昨夜したようにやってみろよ。俺が見ててやるから。上手にできたら、ご褒美やるから…よ。」 言葉の合間に耳を舐めると、もたれかかった背中がひくひくと震える。それが可愛くて、三蔵は綺麗な首筋もゆっくり舐めてやった。 「やって…ないも…。」 背中ばかりか、悟空の震えは全身に及んでいる。待ちかねていた愛撫にありつけたのが嬉しくてならないように、全身が次第に火照ってくる。首を捻じ曲げて、三蔵の唇をねだる。それに応えてやると、嬉しそうなため息をついて、両手をおずおずと股間に向かわせた。 「三蔵がいないと…気持ち良くないんだもん。だから…一人では…やってないよ…。」 「へえ…。今は気持ちいいのかよ。」 可愛いことを言うので、腰を強く突き上げてやる。悟空の股間がますます硬く立ち上がるのが分かった。 「んあ…っ、もっと…、三蔵で一杯にして…っ。」 ぎゅっと自分自身を握り締めた両手が、始めはおずおずと、次第に大胆に、自らを慰めていく。すでに一度濡れたそこは、小鳥が囀るような可愛らしい音を立てる。悟空はいまや夢中になって愛撫を繰り返していた。自分のいいところも探り当てようと、しきりに腰も揺するのだが、片足だけの支えでは思うようには動けない。 「んん…っ、三蔵…、さんぞ…っ。」 喘ぐように連呼される。悟空の内側はどんどん熱くなり、うねうねと三蔵を誘う動きを繰り返している。 三蔵にももう我慢の限界だった。開かせた膝を力いっぱい引きつけて落とす。たっぷり潤った悟空の入り口が、湿った音を立てた。 悟空がひいっと悲鳴を上げ、大きくのけぞる。後はもう、歯止めは聞かなかった。 「あ…あ…、ああー…っ、さんぞ…、いい、いいよう…っ!」 夢中で悟空の体を揺さぶる。目は悟空の手元から逸らせない。ジュクジュクと、湿った物同士を擦り合わせる音が部屋中に響いている。悟空の尖らせたつま先が空を蹴る。それすら三蔵には刺激的な見世物で、三蔵は荒々しい動きの合間に、何度も悟空の襟首を噛んだ。 「あっ、あっ、あっ…。」 悟空の喘ぎが次第に短く単調になっていく。終わりが近いのだ。三蔵は力いっぱい悟空を持ち上げると、そこから手加減なしで叩き落した。今まで到達していない一番奥まで、悟空の体が沈み込む。 「あああー…っ!」 悟空が高い声で鳴いた。両手がぎゅうっと絞められる。手の間から白濁が迸り出る。同時に悟空の内部がこれまでにない強さで収縮した。 「うう…っ!」 三蔵も我を忘れてうめいていた。熱いものが悟空の内側に力任せに迸るのが分かる。散々我慢を強いられた後の開放は、いつもより力強くて量も多い。 「ふぁ…っ。」 熱い塊を受け止めて、悟空が膝の上で痙攣した。背中を反らせて余韻に浸るようにぴくぴくと震えていたが、やがてぐったりともたれかかってくる。 三蔵は悟空を抱きとめて、荒い息を整えていた。力を無くしたものを抜き取ると、開いてしまった悟空の入り口から、三蔵の放ったものがだらだらと溢れ出て、三蔵の下肢も濡らした。 「おい、悟空、もういいぞ、ごく…。」 三蔵の言葉が途中で止まった。覗き込むと、悟空の顔は真っ赤だ。対照的に、三蔵の顔色はみるみる青くなる。 「うにゃ…。」 「やば…。」 悟空の額を撫でまわし、三蔵は決定的に青くなる。 夢中になって我を忘れていたが、もともと悟空に無理をさせて、八戒にその痕跡を見咎められないようにするために、自分から手出しをしないことにしたのではなかったか。それが終わってみればいつもより数段悟空に無理をさせてしまっている。 一晩を一人きりで過ごして淋しかったのは、どうやら悟空ばかりではなかったようだ。 三蔵はかんかんに発熱している悟空を抱えて途方にくれていた。 「……………。」 「だからっ、昨夜いきなり熱が出てっ、俺は大変だったんだ!」 どこかで夜明かしをしてきて宿に戻った八戒は、当然ながらすこぶる不機嫌だ。 保父を自称する彼は、悟空に対してはとても甘い。その彼が目を話した隙に発熱で人事不詳に陥っているのだから無理もない。 八戒の冷たい視線に、三蔵は嘘じゃないぞと叫び、ドキドキと目を逸らした。確かに嘘はついていない。必要な部分を省いているだけだ。 三蔵はそわそわと視線を彷徨わせた。八戒の無言も恐かったし、悟浄の呆れたような態度もカンに触る。 あれから昨夜は確かに大変だった。幸いなことに、襟足の噛み跡は、シャツの上からだったからたいして残っていない。多少増えたとしても、前からの傷跡などにまぎれてごまかせるはずだ。 窓を開けて匂いを飛ばし、汚れたものは丸めて洗濯籠へ放り込み、そうできないものは必死で拭いた。いつも悟空にやらせるから、こんなに手間がかかるとは思いもよらなかった。 「まあ…、そんなに言うなら信じるとして…。」 到底信じていない口調で言うと、八戒は悟空に向き直った。真っ赤な顔で息を泳がせる悟空は、それでもどこか嬉しそうな顔をして眠っている。 「悟空、足は大丈夫ですか? ちょっと目を覚ましてください。お薬を飲みましょう。 悟空、大丈夫ですか?」 耳元で静かに語り掛ける。三蔵に掛けた声とは雲泥の差だ。優しく揺り起こされて、悟空はふにゃふにゃ呟きながら、薄目を開けた。 「悟空…。」 「うん。三蔵の…気持ちよかった〜。」 へへへと笑い、すぐにまたふにゃふにゃと眠ってしまう。 八戒が凍りついた。三蔵の顔色がみるみる砂色になる。遠巻きに様子を眺めていた悟浄が、なんだか嬉しそうにあーあと呟いた。 「………信じてるって言ったのに…。」 「わ、わ、よせっ、八戒! 俺が悪かったからっ!」 「だ〜っ、なんで俺までっ!」 狭い宿屋の一室に、まばゆい光が飛び散った。 怒号の飛び交う中、高熱の悟空は、それでも穏やかな表情で眠っているのだった。 |