さっちゃん




「遅い! 何やってたんだ。」

「ただいまあ。あれ、悟浄と八戒は?」

「奴等ならとっくにしけこんでる。野宿が続いたからな。こっちへ来いよ。」

「うん。あのな、この宿の女の子と遊んできたんだ。」

「…まだほんのガキじゃねえか。何をしたって?」

「歌をな、教わってきたんだ。」

「…お前が教わったのかよ。…で、何の歌だって?」

「えっ、(にこ) 聞いてくれるの?」

「ああ。(にや) たっぷり歌ってもらおうじゃないか。」

「えーとね、『さっちゃん』て歌。ちゃんと3番まで覚えたんだ。知ってる?」

「当たり前だ。お前が知ってて俺が知らん事があるか。」

「ちぇ、なんかやな感じ。
さっちゃんはね、さちこってゆーんだほんとはね♪」

「いきなり違うな。さちこじゃなくて、サルだ。」

「ええーっ! 語呂が悪いじゃん! ぜってーウソだ!」

「その先、歌ってみな。納得すっから。」

「…だけどちっちゃいから自分の事さっちゃんて呼ぶんだよ。
かわいいな、さっちゃん。…別に納得しねえじゃん。」

「お前も自分の事サルって呼べねえだろ。」

「むきーっ! サルじゃねえもん!」

「いいから続き歌ってみな。」

「なんだよ、…擦り寄ってくんなよ。
さっちゃんはね、バナナが大好きほんとだよ。…な、何出してんだよ!」

「サルは俺のバナナ大好きなんだろ。歌の通りにしてやるよ。」

「え? 歌の通りって?
だけどちっちゃいからバナナを半分しか…。わあ!
やだやだ! んっ、んふうっ!」

「本当に半分しか入らないな。おい、歯ぁ立てるんじゃねえぞ。」

「んむうっ、んん…っ! んっ、…んっ、んう…。」

「やだやだ言ってても、ちょっと撫で回してやればすぐその気になるんだな。まさしくかわいいな、だ。…かわいそうね、かな。
…ほら、もっと足開けよ。」

「んぁ…っ、やだあ、こんなの…っ。」

「なんだよ。俺のバナナが嫌いだっていうのか?」

「き、嫌いじゃ…ないけど…。」

「ならいいじゃねえか。それに、ちっちゃいから半分しか食べられないだけだろ。」

「あっ、やだ、どこ触ってるんだよう。」

「大きくなれば、全部食べられるんじゃねえのか? 下のお口で。大きくしてやるよ。このモンキーバナナ。」

「…! そんなにちっちゃくねーもん!」

「喚くなよ。モンキーバナナは甘くて数が多いのが魅力なんだぜ。」

「あっ、あっ、やっ、…さんぞ…っ。」

「ほーら、大きくて蕩けそうになってきたじゃねえか。こっちの方まで涎が垂れてきてるぜ。食わしてやろうか。腹一杯…な。」

「やあっ、まだ無理…っ! あ…、あっあっ。」

「無理な事ねえよ。美味しい美味しいってパクパクしてるぜ。」

「あ…、あんあん。もう…いっぱいだよう。」

「ほーらな、大きくなったから、こっちのお口には全部入ったろ。しかし、口におをつけると途端にいやらしくなるのはなんでかな。…ま、いいか。
おい、サル、3番も歌えよ。」

「ま…まだ歌うの〜?」

「ほら、早く、歌えよ。」

「ひ…、やんやん、そんなに掻き回しちゃやだあ。う、歌うから…っ。
さ、さっちゃんが…ね、と…おくへ、行っちゃうって、ほ、ほんと、かな。」

「奥で、イっちゃう、…ってか。」

「ひあ…、そんな…っ、深い…っ。」

「歌が、お留守、だぞ。」

「…だけど…ちっちゃいから…、僕の事、忘れて…、
やぁん、も、もう…、そ、そんな…、さんぞ…っ。」

「歌が、違う、歌に、なっちまった、か。ま、こっちの、歌の方が、俺、好み、だけど、な!」

「さんぞ…っ、そこ、そこ…っ。あ、あ、…ああ〜っ!」

「もう、イったか。相変わらず、早いな。
さて、こっちも、これから…。 ん? ん?」

「……………。」

「…あっ、このやろっ、俺の事忘れて一人で遠くへ行きやがったな!
おいっ、起きろっ、どうすんだよ、これっ!」

「……………………。」

「…だめだ、起きやしねえ。ちくしょ〜。俺に一人でどうしろって言うんだよ。
あ〜あ、まったく歌の通りになっちまった。
…淋しいぜ、三ちゃん…。」



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